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  <title>輪廻-rinne-</title>
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  <description>見えない真実。それは無限の闇。生まれてきた意味を知ろうと願っても、世界は廻る。</description>
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    <title>第十一話＊牡丹</title>
    <description>
    <![CDATA[<p>いつか本当に、自分の口から全てを話せる時が来るのだろうか。<br />
私はただ漠然とした未来に、頭を悩ませるだけだった。<br />
一日の授業が終わると、早急に学校を出た。<br />
月曜、水曜、土曜、日曜の週四日。<br />
学校からは少し離れた、だけど少し家には近い所で、時給が良くて融通の利くバイトを探していた時に見つけた小さな居酒屋で働いている。<br />
私の自分勝手な意見を取り入れたバイトは、それくらいしかなかったという理由もあるが<br />
実は、父の高校からの友達が経営していて、実母とも仲が良いのだ。<br />
何度かお手伝いという形で働いた事があったが、高校に上がった時、正式に雇ってもらったのが本当の理由。</p>
<p>お店の名前は「牡丹」<br />
店長の名倉正晴さんは、とても優しい人。女将さんの美弥子さんも、とても優しい。</p>
<p>「遅れてすみません」<br />
「あら、紫乃ちゃん。おかえり」<br />
裏口から店に入ると、美弥子さんが支度を調えていた。<br />
「今日もよろしくね」<br />
「はい」</p>
<p>駅の近くに建っているので、お客さんは皆、仕事帰りのサラリーマンが多い。<br />
ホールでの仕事がほとんどなので、お客さんとふれあう機会も多く、その時間がとても楽しかったりする。</p>
<p>「あれ？真生君？」<br />
私より３歳年下の真生君は、美弥子さんと正晴さんの子供。<br />
たまに店を手伝っている。<br />
「今日、パートの人少ないんだって」<br />
弟の居ない私にとって、真生君は本当の弟のような存在だった。<br />
「そうなんだ」</p>
<p>二言三言、言葉を交わし、私はロッカーに向かった。<br />
支度を調えていると、二つ年上の伊織さんがやってきた。<br />
「あら。今日はいつもより遅かったの？」<br />
伊織さんは、とても明るい性格でかわいらしい人。<br />
お客さんにも人気があって、私も可愛がってくれている。<br />
瀬野高校の卒業生でもあり、話も合うのだ。</p>
<p>「どうしたの？ぼうっとしてさ。なんか、いつもの紫乃じゃないみたい」<br />
「そ、そうかな･･･？いつもと、一緒だと思う･･･んだけど」<br />
伊織さんと私は友達のような関係だった。<br />
敬語も使わず、素の自分でお互いがそう接しているのだ。<br />
自分でも気づかないくらい、きっと私は彼女との距離を自分から縮めていた。</p>
<p>「ほら、注文聞いてきて」<br />
うん、と首を縦に振るだけ振って、私は注文を聞きに行く。<br />
この場所なら、学校の誰かが来る心配もない、はず。<br />
今日まで、私はそう高をくくっていたのだ。<br />
駅に近い、落ち着いた雰囲気のお洒落な居酒屋。<br />
色んな人が、この店を訪れる。<br />
それだけ、良いお店だと言う事。</p>
<p>まさか、こんな日が来てしまうなんて･･････。<br />
<br />
&nbsp;</p>]]>
    </description>
    <category>小説</category>
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    <pubDate>Mon, 30 Nov 2009 13:23:31 GMT</pubDate>
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    <item>
    <title>第十話＊いつもと違う朝</title>
    <description>
    <![CDATA[<p><br />
「私の家庭、色々と複雑で･･･。結局、自分から逃げることしかできないんです。愚か、ですよね」<br />
先生は言葉に詰まっているようだった。<br />
どうして自分はこんな事まで話しているんだろう<br />
と思いつつも、どこかで答えを期待している。<br />
そんな自分に腹が立つほどだ。</p>
<p>「逃げることも、大切だ。自分を守るには、大切だ･･･。<br />
俺はお前の歳の時は逃げる事も出来なかったからな･･･むしろ、深山が羨ましいよ」<br />
え――？</p>
<p>「実はさ、母親の俺への虐待がばれて離婚したんだ。<br />
それからの生活の方が悲惨だったんだけど<br />
父親が勤めてた会社が倒産して、飲めなかった酒飲んで、暴力。<br />
それが当たり前になったんだ。ちょうど・・・お前くらいの頃だったかな・・・。<br />
大学入って一人暮らし始めたから<br />
それ以来父親とも勿論、離婚してからは母親とも会ってない。<br />
結局は・・・逃げた事になるのかな･･・。今、両親がどこで何をしているか、なんてのも知らないしね。<br />
だから、なんとなく放っておけないんだよ、お前のこと。<br />
少し違うかもしれないけど、昔の俺と、似てるから･･･。<br />
って、こんな事話しても深山を困らせるだけだよな、悪い････」</p>
<p>先生の過去を私なんかが知る権利なんて無い。<br />
それ以上聞くことも干渉することも出来ず、重い空気だけが流れる。<br />
<br />
だけど、なんだか少し嬉しかった。<br />
先生がどうしてこんなにも私に関わろうとするのかが解ったような気がしたから。、<br />
ただの同情なんかじゃない。<br />
同じ痛みや苦しみを持つ者同士だから・・・。</p>
<p>「なぁ、深山。一度、病院でカウンセリングとか受けてみないか？<br />
リストカットだって癖になってるみたいだし、寝れてないみたいだし。俺の知り合いで良ければ･･･」<br />
「ありがとうございます。でも、大丈夫ですから、ほんとに･･･」</p>
<p>これ以上迷惑はかけられない。<br />
それに、私が行くべき所なのかも、まだわかっていない。<br />
最近はだいぶ落ち着いてきたし、突然襲ってくる衝動も少なくなった。</p>
<p>「でもほら。今は薬での治療とかもあるし、やっぱり一回･･･」<br />
「ほんとに大丈夫ですから･･･」<br />
「まぁ、急にってわけじゃないから。その気になったら、いつでも言いなさい」<br />
「はい･･･」</p>
<p>先生はいつものように笑って、私の頭をまたくしゃりと撫でた。</p>
<p>「もうすぐ校門が開く時間だぞ」<br />
一つ大きくうなずき、私は立ち上がった。<br />
校門まで僅か数分。</p>
<p>「いつか･･･。いつか話す決心がつけば、聞いてくれますか？私の事」<br />
「あぁ、勿論」<br />
いつも一人で歩くこのわずかな距離を<br />
誰かが隣に居るとこんなにも景色が違って見えるんだと始めて気がついた。<br />
&nbsp;</p>]]>
    </description>
    <category>小説</category>
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    <pubDate>Fri, 06 Nov 2009 15:34:37 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>第九話＊偶然</title>
    <description>
    <![CDATA[<p>今も変わらない、あの人の態度。<br />
兄は大学を卒業後、有名な企業に入り一人暮らしを始める。<br />
高校から付き合っていた彼女と共に。<br />
父もほとんど帰って来ない。<br />
実質、麻子さんとあかりと私の三人暮らしなのだ。</p>
<p>高校に入ってから、私はバイトを始めた。<br />
いつか、この家を出て行くために。<br />
そして、あの人と過ごす時間を減らすために。<br />
夜明け前に起き、一人朝食を済ませると、朝早い電車に乗って、誰も居ない近くの公園で時間をつぶす。<br />
そして、校門が開く頃に登校し、誰も居ない教室でただひたすら時間が経つのを待った。<br />
バイトの無い日の帰りは図書室や市の図書館に行くのが日課だった。<br />
休日にはバイトを入れ、極力家に帰る時間を遅らせる。<br />
一分でも、一秒でも、家に居る時間が短くなるのなら・・・。</p>
<p>けれど、やっぱり限度がある。<br />
あの人からは、完全には逃れることは出来ない。</p>
<p>少しずつ増えていく、自分で付けた傷と、あの人が付けた傷。<br />
痣や傷を隠すのは至難の業だ。<br />
すっかり自分自身を見失ってしまった私は、何が善で悪なのか、わからなくなってしまったんだ。</p>
<p>「深山、おはよう」<br />
え・・・・・・。<br />
色々と考えながら、公園のいつものベンチに座っていると、後ろから声が聞こえた。</p>
<p>「お、おはようございます･････」<br />
どうして・・・。<br />
そんな顔をしていると、先生は答えを言う。<br />
「朝の挨拶運動の指導で、早く来すぎたんだ。まだ校門開いてないし・・・。で、此処で時間でも潰そうかな、って」<br />
そう、だったんだ・・・。<br />
それがもし嘘だったとしても、私はなんだか嬉しくなった。<br />
きっと、少しでも理解してくれる人を見つけられたから。</p>
<p>「眠れなかったのか？」<br />
「へ？」<br />
「いや、目の下にクマが･･･」</p>
<p>私は慌てて顔を触る。<br />
ほんと、だ・・・。</p>
<p>「なかなか、寝付けなくて･･･」<br />
「そうか･･･。俺の、せいかもしれないな･･･」<br />
「そういうわけじゃ･･･！」</p>
<p>確かに、寝られなかったのは先生に色々と言われて考えていたからだけど、その理由は先生が優しくするからであって、決して悪い事を考えてではなかった。<br />
「ただ･･･先生は優しすぎます。優しさに、慣れていないから・・・どうしたらいいのかわからないんです･･･」<br />
「親の･･･せい、か？」<br />
虐待という言葉を敢えて使わず、そう質問した先生のその優しさが、時に苦しく、時に嬉しい。<br />
もう、先生には何もかも見透かされているんだ。<br />
「あ、いや。言いたくなければ良いんだ。また踏み込んだ事を聞いてしまったな･･･俺の悪い癖だ･･･すまなかった」<br />
先生が謝ることじゃないのに･･･どうして･･････。<br />
&nbsp;</p>]]>
    </description>
    <category>小説</category>
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    <pubDate>Tue, 13 Oct 2009 10:18:29 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>第八話＊過去_2</title>
    <description>
    <![CDATA[<p><br />
１４年も前、私の母は大病を患い、35歳という若さで亡くなった。<br />
その二年後、父は自分の子供を身ごもった、職場が同じだった今の義母、麻子さんと再婚した。<br />
そして、義妹のあかりが生まれた。<br />
再婚して当初は、私も兄である暁もかわいがってくれて<br />
「もうすぐ妹が出来るわよ」と笑顔が絶えない家庭だったのだ。<br />
変わってしまったのは、あかりが生まれてからだった。<br />
あかりは、父との実子なので、麻子さんはとても可愛がった。<br />
暁は義兄なれど、父に似ているので、とても可愛がっていた。<br />
しかし、どちらかと言うと私は母の方に似ている。<br />
実は、麻子さんと私の母も元々は同じ職場で、好きだった父を取られた相手でもあったことから、私の事を他の二人とは違う目で見るようになった。<br />
そんなある日。<br />
家に私と麻子さんの二人だけしか居なかった時。</p>
<p>「結婚すれば、あの人ともっと一緒に居られると思ったのに・・・。全然帰って来ないじゃない！<br />
ほんっと、あんたって似てるわよね。洋子に。憎たらしい！」<br />
突然言い出すと、あかりが生まれるからと言って辞めた煙草を吸って、まだ小さかった私の腕に押しつけた。<br />
「あついっ」と叫ぶように声を出しては、また押しつけられ、それの繰り返しだった。<br />
幼稚園と小学校では、帰ってくる時間が違う。<br />
まだ一歳にも満たないあかりは、この時間はお昼寝の時間だった。</p>
<p>「誰かに言ったら、承知しないわよ」</p>
<p>そう言われてしまえば、私は黙ってるしかなくなる。<br />
誰よりも、麻子さんが怖くて仕方がなかった。<br />
それから、その行為は毎日続いた。<br />
煙草だけじゃない。暴力も。<br />
蹴られて、吐いた事もあった。</p>
<p>だから、私は誰も信じられなくなったのかもしれない。<br />
黙って、顔色をうかがって。<br />
馬鹿みたいに、人の言いなりになって。</p>
<p>リストカットを覚えたのは、中学三年の頃だった。<br />
何かの、本で読んだことがきっかけ。<br />
そうしなければ、とうとう自分自身が壊れてしまいそうだった。<br />
赤い血を見ると、生きている証なんだと落ち着く。<br />
だけど、これも誰にも知られるわけにはいかない。</p>
<p>そうして、ただ日々だけが過ぎていった。</p>]]>
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    <category>小説</category>
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    <pubDate>Tue, 14 Jul 2009 13:11:48 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>第七話＊駅のホーム</title>
    <description>
    <![CDATA[<p>本当は家に帰りたくないだなんて言える訳が無い。<br />
心配している人も居ないだなんて、言える訳がない。<br />
やめて・・・。<br />
これ以上、私を苦しめないで･･･。</p>
<p>『まもなく、このホームに電車が･･･』</p>
<p>私は耳を塞いでその場にしゃがみこんだ。<br />
ごめんなさい･･･ごめんなさい･･･！<br />
こうなると、もう何も考えられなくなる。<br />
昔からそうだった。</p>
<p>お願いだから･･･許して・・・・・・！</p>
<p>必死に願っても、許してくれるはずがないとわかっていても。<br />
抵抗することを忘れ、ただ心の中でそうやって願うだけの毎日。<br />
許して、お義母さん・・・・・・！</p>
<p>「――ま？深山！」<br />
何度、私の名前を呼ぶこの声を、この台詞を聞けば気が済むのだろう・・・。<br />
「せん・・・せ･･････」<br />
息が上がり、何も考えられない私に残っているのは、身体という魂の入れ物だけだった。<br />
職員室を出て、駅で電車を待っている間に余計な事を考えていたら、一時間も経っていただなんて・・・。<br />
仕事を終えた小野先生と神辺先生が、私を心配そうに見ていた。<br />
「一体、お前は何を隠しているんだ・・・」<br />
至極悲しい顔をしているのを見て、私は苦しくなった。<br />
たかが教師が、たった一人の生徒のために、ここまで優しくするものだろうか･･･。</p>
<p>先生は私に似ているから？</p>
<p>同情なんて、要らない。<br />
だからもう、放っておいて･･･。</p>
<p>「先生は・・・。先生は、どれだけ私の心の中をかき乱せば気が済むんですか？！<br />
今まで溜めてきたこと、全部話してしまいそうで･･･私、怖いんです･･････。<br />
その上、先生ならわかてくれるかも、って期待している自分が居るなんて・・・。<br />
私は、そんな自分が許せません･･･！！」</p>
<p>先生は苦笑して、私の頭を撫でた。</p>
<p>「馬鹿だな。お前が話したい時に話せばいい。さっきは少しきつく言ってしまって、悪かった･･･。<br />
似てたんだよ。昔の俺に。・・・本当は帰りたくないんだろう？」<br />
「なんで･･･」<br />
どうしてそんな事が解るというの？<br />
だって、私は一言も･･･。<br />
「わかるんだよ。言っただろ？お前は俺に似てるって」</p>
<p>先生は笑顔を見せた。<br />
どういう事･･･、それ。</p>
<p>「色々と一気に言うと深山が混乱するだろ？」<br />
小野先生の隣に居た神辺先生が突っ込む。<br />
「別に一気に言ってはないだろ？」</p>
<p>――！<br />
私はそれまで、神辺先生の存在に気づかなかった。<br />
驚いた顔をしていると「大丈夫だよ。こいつは全部知ってるからさ」と先生は言う。<br />
そしてその言葉に、私は余計に混乱したのだ。</p>]]>
    </description>
    <category>小説</category>
    <link>http://tkssva69.blog.shinobi.jp/%E5%B0%8F%E8%AA%AC/%E7%AC%AC%E4%B8%83%E8%A9%B1%EF%BC%8A%E9%A7%85%E3%81%AE%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0</link>
    <pubDate>Sat, 04 Jul 2009 14:58:42 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>第六話＊涙</title>
    <description>
    <![CDATA[<p>「うっ・・・ぇ」<br />
声を殺して泣く姿を見て、先生は一言つぶやいた。<br />
「どこで声を殺して泣く事を覚えたんだか、深山は・・・」<br />
私はいつからこうして声を殺して泣くようになったのだろう。<br />
それは多分、もう記憶にすらない、ずっとずっと昔。</p>
<p>先生は下校時間も過ぎようとしているのに、涙が止まるまで一緒に居てくれた。<br />
「落ち着いたか？」<br />
先生の顔を見ると、とても寂しそうな目をして私を見ていた。<br />
私は一つだけ首を縦に振る。<br />
さすがに、返事を声にすることはできなかった。<br />
入れてくれたコーヒーをまた一口飲み、もう一度落ち着きを取り戻す。<br />
「それを飲んだら、今日は帰りなさい。またいつでも話は聞いてあげる。あんまり帰るのが遅くなると、心配されるだろう？」<br />
「――！」<br />
その言葉は私の胸をえぐるようにして痛ませた。</p>
<p>家族なんて、居て居ないに等しいものだから・・・・・・。</p>
<p>「・・・山？深山？」<br />
「え・・・・・・？」<br />
「どうした？また顔色が・・・」</p>
<p>考え事をしていました、だなんてこの状況で言えるわけでもなく、私はただ軽くうつむいてガラスのテーブルを見つめた。<br />
「なんでも・・・ないです」<br />
足早にその場を立ち去ろうとソファーから立ち上がり、鞄を手に取る。<br />
その瞬間、私は先生に腕を掴まれ、そのまま先生の方へと引き寄せられた。</p>
<p>「え――」<br />
後ろから抱きかかえられた状態になった私は、一体何が起こったのかを理解するまでに少し時間がかかった。<br />
先生自身も体が勝手に動いたらしく、自分が何をやったのかを理解していなかったようだ。<br />
「･･･！ごめん、つい･･････。なんか、苦しそうな顔してたから・・・」<br />
驚きはしたけど、嫌ではなかった。<br />
先生に触れられた部分が熱い。<br />
そして、強く握られた手が離される。</p>
<p>私の腕をつかんだ先生の手が震えてる・・・・・・。<br />
どうして・・・。<br />
どうして先生は、そんなにも怯えているの？<br />
まるで、今の私のように･･･。</p>
<p>「私、本当は･･･」<br />
だめ。<br />
これ以上、踏み込んでこないで・・・。</p>
<p>「これだけは覚えておきなさい。言いたい事は言わなきゃ伝わらないって事を。<br />
詮索や強制はしないが、深山が今何を思っているのかは深山自身しか解らないんだ・・・。<br />
それに、そんな顔されたら、余計に放っておけなくなるだろ・・・」<br />
少しだけ困ったような顔をしながら先生は言う。<br />
「ごめんなさい・・・でも、今はまだ、先生にも言えない。･･･失礼します」</p>
<p>私はそういって、その場から立ち去る事で精一杯だった。<br />
どうして･･･。<br />
どうして先生は、そんな目をしているの？</p>
<p>ずっとその事が頭から離れなくて、私は誰も居ない駅のホームで、また涙を流した。<br />
&nbsp;</p>]]>
    </description>
    <category>小説</category>
    <link>http://tkssva69.blog.shinobi.jp/%E5%B0%8F%E8%AA%AC/%E7%AC%AC%E5%85%AD%E8%A9%B1%EF%BC%8A%E6%B6%99</link>
    <pubDate>Wed, 01 Jul 2009 11:58:46 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">tkssva69.blog.shinobi.jp://entry/24</guid>
  </item>
    <item>
    <title>第五話＊優しさ</title>
    <description>
    <![CDATA[<p>「私、やってはいけないことだってわかってるのに、どうしても止められなくて･･･」<br />
気がついたらカッターを握りしめ、左手首からは鮮血が流れる。<br />
痛みなんて、感じられない。</p>
<p>「深山・・・俺はお前を否定はしない。だから、安心しなさい」<br />
その言葉に私は安堵した。<br />
自分の存在が認められたような気がしたから。<br />
自分を理解してくれる人が現れたように感じたから。</p>
<p>いつも、自分が自分でないように感じていたし、コントロールすることさえ出来なかった。<br />
ただ時が流れるのを、じっと待つだけだった。</p>
<p>「先生は･･･強制的じゃないんですね」<br />
私はふと思った事を口にした。</p>
<p>中学も卒業する頃。<br />
先生や友達にばれてしまった事がある。<br />
その時、先生達は理由を問いただし、冷たい視線で私を見るようになった。<br />
友達は友達で無くなり、私は結局、家でも学校でも一人になったのだ。</p>
<p>自分の中で、何故こうなったのかの理由ははっきりしている。<br />
それを打ち明けることの出来ない私は、きっと何を問いただされても言うことは出来なかった。<br />
今なら･･･。<br />
先生なら、わかってくれるのかもしれない。<br />
どこかで少し期待している自分が居る。</p>
<p>「強制しても、何にもならない。俺が一番良く知っている・・・」<br />
その言葉が嬉しかった。<br />
嬉しい反面、自分の心の中を全て見透かされたような気がして、少しだけ動揺した。</p>
<p>人に優しくされることに、慣れていないから・・・。</p>
<p>「理由なんて、関係ない。深山がどんな理由でリストカットをしたのかは、先生にはわからないけど、それは深山にとって<br />
思い出したくない過去かもしれない。それを無理矢理に問いただすような事をして何になる？<br />
相手を苦しめるだけじゃないかな・・・。少なくとも、俺はそう思ってるんだ」</p>
<p>私はその言葉を素直に受け止めた。<br />
思い出したくない過去。<br />
私が悩んだ日々。<br />
言うには長い時間がかかるけれど、まだ誰にも言えない。<br />
それは私が許さない。<br />
誰かに言ったからと言って、何かが変わるわけではない事を、私は知っているから。</p>
<p>それでも、先生の言葉一つ一つが嬉しかった。<br />
溢れそうになる涙を必死にこらえる。<br />
泣いても何も良いことは起こらないのだから。<br />
けれど、それは先生には通用しなかった。<br />
なぜなら、私が涙をこらえているのが、先生にはわかってしまったのだから。</p>
<p>「泣きたい時に泣かないで、いつ泣くんだ？我慢するもんじゃないんだから、泣きたい時に泣けば良い」<br />
苦笑混じりの優しい顔は、さらに私を安心させる。<br />
気づくと何かが事切れたように、大粒の涙が頬をつたう。<br />
堪えきれずに、私は声を殺して泣いていた。</p>]]>
    </description>
    <category>小説</category>
    <link>http://tkssva69.blog.shinobi.jp/%E5%B0%8F%E8%AA%AC/%E7%AC%AC%E4%BA%94%E8%A9%B1%EF%BC%8A%E5%84%AA%E3%81%97%E3%81%95</link>
    <pubDate>Thu, 25 Jun 2009 12:52:56 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>第四話＊過去_1</title>
    <description>
    <![CDATA[<p>生徒指導室を出るまでわずか数秒。<br />
その間に色んな事が頭の中を巡る。</p>
<p>今言わなきゃ。<br />
私は、何を怖がっているの？<br />
今言わなきゃ、いつ言うの？<br />
私はもどかしい自問自答を繰り返し、ようやく声を出す事が出来た。<br />
「あ、あの。明日、また此処に来ても良いですか？頭の中、整理して･･･今度はちゃんと･･････」<br />
先生は少し驚いた顔をしたけれど、小さく笑って「いつでも」と優しく言ってくれた。</p>
<p>職員室を出て、帰路につく。<br />
その足取りは、いつもより数倍も重い。</p>
<p>家の事を考えると帰りたくなくなり、さっきの出来事を思い出すと、余計に苦しく胸が締め付けられる。<br />
私のこの傷は、家庭環境に問題があると言っても過言ではない。<br />
はぁ・・・。と大きなため息をついた後、大きく息を吸って<br />
私は何も考えず、全てのものに無関心になって、電車に乗り込んだ。</p>
<p>あの日から数日。<br />
悩みに悩んだあげく、先生の事もまだまだ子供ながらに気になったので<br />
もう一度、小野先生を訪ねて職員室へ向かった。</p>
<p>「小野先生･･････」</p>
<p>その時の私は、自分でも驚く程弱々しかった。<br />
先生は何も言わず、生徒指導室の鍵を持って部屋に入った。</p>
<p>「少し、整理出来たか？」<br />
「はい・・・」<br />
ソファーに座ると、先生が特別だと言ってコーヒーを入れてくれた。<br />
一口だけ飲んで、話を続けた。<br />
私は、今なら全てを隠さず、先生に打ち明けることが出来るかもしれない、と思う程、落ち着いていたのだ。</p>
<p>「いつから・・・そんな自分を傷つけるようなことを・・・。お前はまだ若い。なのにどうして･･･」<br />
その行為に若いも若くないも関係ないような気がするが･･･。<br />
「二年前・・・程から」とかるく答えた。<br />
「二年、か。もっと早く気がついてやれれば・・・。決して良いとは言えないけど、悪いとも一概には言えない。･･･最近は？」<br />
「先生はいつからだったんですか？」<br />
私は逆に先生に質問をした。自分の事だけを話すのは、不公平だ。<br />
先生が見せてくれたあの傷の映像がまだ頭から離れない。<br />
隠された闇。<br />
私と、どこか少し似ているような気がする。<br />
<br />
「ん？ああ･･･俺もお前くらいの時くらいだったかな。別にいじめられていた訳じゃないけど、色々・・・な」<br />
やっぱり似てる。<br />
「私も･･･別にいじめられているわけじゃないんです。でも･･･気づいたらカッター持ってて。最近は、あまり･･･」<br />
それを聞いて先生は少し安心したような顔をした。<br />
私がクラスの誰かにいじめられているとでも思っていたのだろうか。<br />
自分のクラスでいじめがあっては、先生も困ってしまうに違いない。<br />
私はクラスでは浮いた存在だということは確かだ。<br />
だからといって、それをいじめだとは言い難いものがある。<br />
加奈子が居るから、まだ私の居場所があるのだとさえ感じているくらいだ。</p>
<p>「きっと俺は自分の存在自体を確認したかったんだ。・・・今でも、時々やってしまいそうになる自分が居る。昔よりは、衝動も理性で抑えられるようになったけどな」<br />
それを聞いて、私も大人になればこんな風になるのかな、と一瞬だけ考えてしまった。<br />
&nbsp;</p>]]>
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    <category>小説</category>
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    <pubDate>Tue, 23 Jun 2009 14:28:59 GMT</pubDate>
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    <item>
    <title>第三話＊リストカット</title>
    <description>
    <![CDATA[<p>私は黙ったまま、左手に付けた黒いリストバンドを見つめていると、先生は小さなため息をついた。<br />
「隠していても、何も解決しない。」<br />
確かにその通りだとは思う。<br />
だけど、こんなの･･･卑怯だ。</p>
<p>「見せたくないのはわかる。しかし･･･」<br />
先生もその先の言葉を詰まらせた。<br />
許されぬ行為だと理解はしていても、どうしても止められず繰り返す過ち。<br />
それは、変わりない真実。</p>
<p>「どうしてそんな事を･･･」<br />
先生には分かりはしない。先生だけじゃない。そう、誰にも。<br />
「何が･･･解るというのですか？そんなの、ただの――」<br />
エゴだ。</p>
<p>「本当は、こんな事言える立場じゃないけど、少しは深山の気持ち･･･解ってあげられるような気がするんだ。俺も――」<br />
そういって先生は、シャツのボタンを外し袖をまくる。<br />
新しいものは無いけれど、無数の古傷。<br />
「え――」<br />
「俺も、深山と同じように、きっとやってはならないことを過去にやってしまったから･･･。ははっ。こんな事生徒に言える事じゃないよな。悪かったな、急に呼び出して問いただすような事をして。」<br />
私はまだ少し信じられなかった。<br />
私の左手にもある、無数の傷。<br />
客観的に見ることなんてなかったから、少し驚いた。<br />
周りの視線からは、こういう風に見られているのだ、と改めて気づかされた。<br />
「あのっ･･･」<br />
その先の言葉が浮かんでこない。<br />
まさか。だって、あの明るくて生徒にも頼られている先生が。どうして･･･。<br />
そんなはずは――。</p>
<p>リストカット。<br />
その行為を繰り返す、リストカッター。</p>
<p>「どうして･･･」<br />
「ほら、遅くなってしまう。本当にすまなかった。気をつけて、帰りなさい」<br />
無理矢理話しを変えるようにして、先生はそう言った。<br />
私の脈は速く打ち、肩で息をするほど動揺していた。<br />
その衝動は時間が解決してくれることを、私は知っている。<br />
だから、治まるのを、ただひたすら待つ。</p>
<p>大丈夫。大丈夫だから――</p>
<p>何度も頭の中で繰り返す。<br />
「落ち着いたら、また話をしよう」<br />
先生はそう言って、指導室のドアの方へ歩き出した。<br />
私もそれにつられ、ソファーから立ち上がりゆっくりと歩き出す。<br />
頭が爆発しそうになりながら、さっきの先生の言葉が頭の中を巡る。<br />
もう一度、ゆっくりと、先生と話しをしなきゃ。<br />
その時、どうしてかそう思ってしまった。</p>]]>
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    <category>小説</category>
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    <pubDate>Fri, 19 Jun 2009 14:19:08 GMT</pubDate>
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    <item>
    <title>第二話＊放課後</title>
    <description>
    <![CDATA[<p>「深山さん、小野先生が呼んでたよ」<br />
放課後、クラスメイトの一人が私にそう告げた。<br />
普段、あまり誰かに話しかけられる事のなかった私は少しだけ驚いた。<br />
「あ、ありがと」<br />
職員室へ向かう途中、何故私が呼び出されたのかを少しだけ考えたけれど、思いつかない。</p>
<p>入った所には数学担当の神辺先生が居た。</p>
<p>私が高校に入学した年、この瀬野高校に英語担当と数学担当として、小野先生と、神辺先生が新任でやってきた。<br />
まだ若いにも関わらず、とても素晴らしい教員で、生徒からも頼られている。<br />
教え方も上手く、生徒との距離も近い。<br />
だからこそ、生徒に好かれるのかもしれない。<br />
とりわけ、私には興味がなかったが、周りは違う。<br />
女子生徒からは「小野先生が良い」だの「神辺先生が良い」だの、そんな言葉をちらほら聞く。</p>
<p>「失礼します。あの、小野先生はいらっしゃいますか？」<br />
「ん？あぁ。奥の指導室に居ると思うけど････まさか深山、なんかやったの？」<br />
「え？いえ･･･そういうわけでは･･･ないと思うんですが･･･」</p>
<p>私にも皆目見当がつかない。</p>
<p>奥の指導室のドアを開ける。<br />
普段入る事のないそこは、とても新鮮な雰囲気だった。<br />
指導室だと言うのに、小さなソファーが二つ。真ん中にはガラス製のテーブルが置いてあった。<br />
そのうちの一つに、小野先生は座っていた。<br />
「座りなさい」<br />
真剣な目をしていた。<br />
私はその目から、目を離すことが出来ず、ただ言われた通りにソファーに座った。</p>
<p>「深山･･･。単刀直入に言うが、一回そのリストバンドをはずしてくれないか？」<br />
一瞬にして思考が停止した。<br />
左の手首にはめた、黒いリストバンド。<br />
それだけは、絶対に外せない。</p>
<p>拒否すれば、先生は怒ってしまうのだろうか。<br />
誰にも言えない、自分の本当の姿をさらすことになる。<br />
それだけは････。<br />
それだけは、避けたい･･･。</p>]]>
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    <category>小説</category>
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    <pubDate>Thu, 18 Jun 2009 13:23:23 GMT</pubDate>
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